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その言葉を聞いた瞬間、橙里の中のなにかが決壊したような気がした。
言葉には出せないそのなにかは、あと少しでわかるような。でも、きっとそれは稜の隣にいないとわからないことかもしれない。
何故なら。
「……稜は……ずるいよ」
「そうか。おまえもな」
静かに涙を流す橙里に、稜が羽織っていたものをかけてくれた。泣き顔を見せたくない橙里のことを配慮してくれたのだ。
──どうしてこんなに溺れてしまったんだろう。
高校生のとき、自然と距離が離れていったときはまだ耐えられた。でも、今離れてしまったら自分は酷い喪失感に苛まれる気がする。
稜は、どうなのだろうか。
稜ならきっと橙里の代わりは誰でも選べるだろう。稜ほど顔面偏差値が高い人間に靡かない女なんていないから。
出来ることならずっと傍にいたい。稜の隣にいれる日まで。
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