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そんなプロポーズのような言葉を言われて、平然としていられる人間がいるだろうか。 涙腺が緩むこともそうだが、橙里の顔は赤く染まっていった。 稜の上半身に背中を預け、顔を傾ける。顔が赤いままだが、それはどうでもよかった。 超至近距離で稜の顔を見る。優しく微笑んだ稜の顔を見て心臓が高鳴り、橙里は確信する。 ──僕は、稜のことが……好きなんだ。 きっと、ずっと好きだった。でも、気付くのが遅すぎた。 稜のことが好きで好きでたまらない。そうだとわかったら、箍が外れたように稜への想いが溢れていく。 それは言葉として溢れるのではなく、涙として橙里の頬を滑り落ちていった。歯止めなく、止まることなく瞳から零れていった。 その様子は誰が見ても美しいもので、その美しさはこの世にあるどんな綺麗なものでも勝てない──密かに稜はそう思った。傷やシミ一つない肌に触れ、顎をくっと持ち上げる。 問答無用で稜の顔を見なければいけなくなった。当然、その間も涙は零れ続ける。

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