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「稜……」
息を吐くように稜の名を口にすると、稜が顔を近付けてくる。
もう数センチでくちびるが触れそうになったとき、襖が揺れるような物音がした。
「……ん?」
二人で音がした方に顔を向けると、小さな声が聞こえてきた。
「やばいっ。ばれた?」
「大丈夫……ていうか、もうすぐキスしそうになってたわよね?」
「気付かれてるっ。やばいよ」
「か、隠れるんだ」
「どこにですか? もう無理ですって……」
このやり取りを聞いて、橙里と稜は呆然とする。
全て聴かれた。
絶対に聞かれたくない人たちに聞かれてしまい、二人して肩を落とすのであった。
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