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「稜……」 息を吐くように稜の名を口にすると、稜が顔を近付けてくる。 もう数センチでくちびるが触れそうになったとき、襖が揺れるような物音がした。 「……ん?」 二人で音がした方に顔を向けると、小さな声が聞こえてきた。 「やばいっ。ばれた?」 「大丈夫……ていうか、もうすぐキスしそうになってたわよね?」 「気付かれてるっ。やばいよ」 「か、隠れるんだ」 「どこにですか? もう無理ですって……」 このやり取りを聞いて、橙里と稜は呆然とする。 全て聴かれた。 絶対に聞かれたくない人たちに聞かれてしまい、二人して肩を落とすのであった。 *****

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