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真剣。きっとその言葉は千咲を納得させるために放った嘘の言葉なのだろうが、橙里からしたら嬉しい言葉でしかなかった。 その稜の言葉を祐子も洋介も聞いていて、驚いたように同じタイミングで目を見開いた。 「……本当に?」 「はい」 嘘だろうに、よく千咲の目を見て言えるな。そう感心していると、祐子がゆっくりと歩み寄ってきた。 「……橙里」 「ん?」 「稜くんのことも考えないとだめなのよ。うちが許したとしても、稜くんのお家が大丈夫というわけではないの」 「……大丈夫ですよ」 「え?」 稜がそう言うとは予想出来なかったのか、祐子が間抜けな声を出して稜の顔を見た。 稜も祐子の顔を見て、目を逸らすことなく真っ直ぐ見据えて言い放つ。 「両親も、そいつのことを気に入ってます。話しても否定はされませんでした」 「……そうなの?」 「ええ。俺も特に結婚したいとは思ってませんし。両親には孫は期待するなとも言いました」 幾ら嘘とはいえ、さすがにそこまで言ってしまうのはどうなのだろうかとひやひやしていると、祐子が諦めたように微笑んだ。いつもの母の姿だ。

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