262 / 527
[15]-1
「……起きろ」
稜の声で目を覚ますと、既に着替えた稜がいた。その声に慌てて飛び起きる。
「っ……今何時?」
「九時半。間に合うのかよ」
「やっべえ!」
布団を剥がすように捲り、急いでリビングに向かった。京都にいたときはゆっくりしていられたから、その所為で体内時計が狂ってしまったようだ。
稜より遅いのはさすがにやばい。
リビングに行くと、テーブルの上に橙里の分のご飯が用意されていた。
「あ、ご飯……ありがと」
「いや。俺もう出たいんだけど」
「出てていいよ!」
「……戸締り心配だからやっぱいい」
出たいと言ったくせに残るとは、なんとも不思議なものだ。
そう思いながらご飯をとにかく掻き込む。早食いは得意だった。
「ごちそうさまー」
「……早いな」
「まあね」
食器を片付け、ふと稜の首にあるチェーンが目に入る。それを見て、橙里はにたりと笑った。
「なーんだ、意外と康くんのこと好きなんじゃん」
「……そんなんじゃねえけどな」
実家を出る前、康が橙里と稜にプレゼントを渡してくれたのだ。というのも、あと数週間後に橙里と稜の誕生日が迫っているため『つまらないものですが』と言いながら渡してくれた。
ともだちにシェアしよう!