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「……起きろ」 稜の声で目を覚ますと、既に着替えた稜がいた。その声に慌てて飛び起きる。 「っ……今何時?」 「九時半。間に合うのかよ」 「やっべえ!」 布団を剥がすように捲り、急いでリビングに向かった。京都にいたときはゆっくりしていられたから、その所為で体内時計が狂ってしまったようだ。 稜より遅いのはさすがにやばい。 リビングに行くと、テーブルの上に橙里の分のご飯が用意されていた。 「あ、ご飯……ありがと」 「いや。俺もう出たいんだけど」 「出てていいよ!」 「……戸締り心配だからやっぱいい」 出たいと言ったくせに残るとは、なんとも不思議なものだ。 そう思いながらご飯をとにかく掻き込む。早食いは得意だった。 「ごちそうさまー」 「……早いな」 「まあね」 食器を片付け、ふと稜の首にあるチェーンが目に入る。それを見て、橙里はにたりと笑った。 「なーんだ、意外と康くんのこと好きなんじゃん」 「……そんなんじゃねえけどな」 実家を出る前、康が橙里と稜にプレゼントを渡してくれたのだ。というのも、あと数週間後に橙里と稜の誕生日が迫っているため『つまらないものですが』と言いながら渡してくれた。

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