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稜が腕組みをしながら待っていたので急いで支度をしようとすると稜に腕を掴まれた。
「……なに?」
稜に好意を抱いていると自覚した以上、稜に接触するだけで緊張してしまうのだ。
それでもなんとか稜の顔を見上げると、稜が今までにない以上に柔らかく微笑んだ。
「すげえかわいかったから、驚いた」
「……んっ!?」
え、なんだその殺し文句。
稜にそんなことを言われたことなんてほとんどなかったのに、今言うなんて。
──ずるいよ、ずるすぎる。
みっともなく緩んだ顔を隠すために口元を顔で隠すと、それを呆気なく外された。
両手首を捕まれ、手が使えない状態で為す術もなく稜の言いなりになる。
稜の顔がどんどん近付いてきて、顔を遠ざけようとして後ろに仰け反ろうとすると手首をぐいっと引き寄せられた。
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