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稜の胸にぶつかるように抱き寄せられた。
なんだかあったかい、と思っていると稜の腕が橙里の背中に回っていた。それに気付いたのは稜が橙里に体重をかけてきたときだった。
「はぁ……」
「……っん」
稜が甘いため息を吐いた。それも、橙里の耳に息を吹きかけるように。
今日の稜は、なにかがおかしい。
「……稜……?」
「何日か前、俺がおまえに言っただろ。俺が一緒に生きてやるよって」
「……うん」
「俺、おまえがいないとやっぱ無理だ」
「……えっ?」
やっぱ、とはどういうことなのだろう。
いや、それよりも。
──なにそれ。さすがに反則すぎる。
そんな言葉、稜は大して本気で言っているわけではないのだろうが、橙里からしたら勘違いしてしまうほどに誘惑めいた言葉だ。
これは、自分も稜の背中に手を回してもいいのだろうか。
恐る恐る手を伸ばしかけた瞬間、思わずその手を止めてしまった。
「おまえが生きていて俺と出会ったことが、こんなに幸せなことだとは思わなかった」
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