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「やっぱり桐野さんアッシュカラー似合いますね。かわいい」
「そう? かわいいって……俺に使う言葉じゃないでしょ」
「かわいいもんにかわいいって言ってなにが悪いんですか。幾らでも言えますよ」
──んん?
気の所為だろうか。二人の会話がどこか甘い気がする。なんとなくもう少し見てみたいと思ったので今よりも扉を開けると、抱き合っている二人が見えた。
橙里は思わず声を出してしまいそうになったが、なんとか堪える。
あれ。この二人って付き合ってたのか? 自分が京都に行っている間になにがあったのだろうか。
首を一人で捻っていると後ろからそっと声をかけられた。
「……どうしたの?」
「っ……瀬島さん」
「今いいとこだからね。こっちおいで」
紙袋を扉の近くに置くように言われたので、その通りにして瀬島について行く。
連れていかれたのは資料室で、橙里は倒れるように椅子に座った。その衝撃で椅子ががたんと音を立てる。
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