269 / 527

[15]-8

「ももちゃんはさ」 「ん?」 「稜くん? と付き合う気はないの?」 稜と付き合う。 そう想像しただけで何故か胸が高鳴ってしまう。別にここに今稜がいるわけではないのに、罪悪感があるのはどうしてだろうか。 「付き合う……って」 「あれ、そういう気はないの? 俺からしたらもうそういう風に見えちゃうんだけどね」 「……付き合ってるみたいに?」 「うん。なんだか悔しいけど」 瀬島が苦笑した。少なくとも普段の瀬島より声のトーンが本気で思わず橙里は動きを止めてしまう。 このまま瀬島に話を持っていかれてはいけない──そう本能が告げる。 でも、橙里が口を開くのと瀬島が超えを発するのとでは、明らかに瀬島の方が早かった。 「オレにしなよ」 「……へ?」 「稜くんより大事に出来ると思うけどな」 瀬島が座ったまま前屈みになり、上目遣いで橙里のことを見つめてきた。 その顔は男前で、稜とはまた違う色気を含んでいた。それでも、何故かどきっとはしない。

ともだちにシェアしよう!