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無意識の内に涙を流していたようだ。目を触ってみると確かに涙が流れていて、ごしごしと擦る。
どうして。どうして。
止めたいのに止められない。それどころか、軽い嗚咽までしてしまう。
「なんっ……で……」
「……」
弱々しく橙里が呟くと、瀬島が動きを止めた。
橙里からは見えなかったが、瀬島の顔は失望じみた顔をしていた。
「……そんなに、好きなんだね」
「……っ、どうしよ……苦しいっ……」
「ももちゃん」
「止まらなっ……」
「橙里くん」
名前を初めて呼ばれた。嬉しいはずなのに、心のどこかで稜に呼ばれたいという欲求が生まれる。
泣いている状態で自制心が生まれるわけもなく、その欲求を口に出した。
「稜にっ……もっと名前を呼んでほしかった……好きすぎて、おかしくなりそううっ……」
「……うん」
「瀬島さん……」
「頑張ったね。いっぱい考えたんだね」
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