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瀬島が何故か苦しそうな声でそう言ってきた。相変わらず声色は優しい。
「あー……なんか、益々欲しくなっちゃった」
「……へ……」
「どうして稜くんはこんなにかわいいコを手に入れないんだろうね」
「かわいくなんか……」
「かわいいよ。自分のものにしたいってくらいにね」
その目が野獣のように変貌し、橙里はつい驚いてしまう。だがそれも一瞬で、すぐに元の瀬島になった。
涙はぽろぽろと流れるものの、段々落ち着いてきた。
すると、部屋の扉が開く音がする。
「……え」
入ってきたのは矢本だった。橙里のことを見てびっくりしたように目を瞠る。
瀬島も驚いているようだった。
「樹くん? どうした?」
「いや……休憩室が入れそうになかったんでこっち来たんだけど、まずかった?」
「うーん、ちょっと良くないね」
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