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橙里が来てからは変わった。 余程自分が橙里に依存していたのかがわかり、自分が恐ろしくなった。 自分よりも表情豊かで、なにより稜のことを必要としている。 正直、かわいい。 男が男にそう思うのはおかしいのかもしれない。でも、稜の言葉一つで嬉しそうに笑い、ときに恥じらいときに感動する。 橙里以上にかわいい生き物には出会ったことがない──常々稜はそう思う。 だからこそ、手放したくなくなる。 「……聞いてる?」 「なにが」 「今日……すんの?」 別に橙里に対して怒ることなどないし、なにかを咎めようとも思わないのに橙里がおずおずとそう聞いてくる。 まるで稜の機嫌を窺うように、控えめに。普段は生意気なくせに、こういうときは子どものようでかわいい。 「……したいのか」 「っ!?」

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