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橙里の本心を訊くような言い方をすると、橙里の顔が瞬く間に赤くなっていく。その様は、誰にも真似出来ないほどに愛らしかった。 ──わかりやすい。 自分も悪魔だとは思うが、橙里の意志をその口から聞きたいと思ってしまうのだ。 これは単なる興味か、はたまた故意か。 「……したいって言ったら引く……?」 「……」 口が弛みそうになるのをなんとか堪える。その言い方はずるい。 橙里の身体を考えて今日はしないつもりだったのだが、そんなに期待されてしまっては出来ないはずがないだろう。 「引かねえよ」 「……」 「早くしろ」 橙里の腕を掴み、そう告げると橙里が整った顔を上げる。その反動でさらさらの髪が靡き、スロー再生されたかのように稜の目に映る。 ──綺麗だ。

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