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「……力入れろ、馬鹿。入るぞ」
耳元で子どもに言い聞かせるようにゆっくりと囁かれ、橙里は甘い吐息を漏らした。
──入ってもいいのに。
痛いのか、気持ちいいのか。未体験の感覚を求め、腰とその奥がきゅんと疼いた。その感覚にすら、喘いでしまう。
「……挿れないの……?」
恐る恐る稜にそう訊くと、稜が動きを止めて橙里のことを怖がらせないような響きで言った。
「おまえの身体に無茶させたくねえんだよ」
「っあ……!? はぁうっ!」
「ほら、ちょっと動かしただけでこうだ。俺のを挿れたら……おまえが壊れる」
稜が悪戯に囁いてからまた動きを再開させた。その腰使いはなんとも洗練されたもので、稜がどれだけ経験してきたかがよくわかるものだった。
対して橙里は処女のように尻を突き出し、まるで初めて与えられる快感を感じているような切ない声を出していた。と言っても、繋がれない虚しさの所為でもあるのだろうが。
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