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「……なんか、くちびるが赤くなってる気がする」 「……ほんとだな」 すっかり色んな液体で汚れたシーツを洗濯機に放り投げ、お互いに裸のまますぐ寝る気分でもないので他愛ない話をしていた。 鏡を見ながら肌が荒れていないか見ていると、くちびるが赤くなっていることに気付いたのだ。 「えー? 口紅でも付いてんのか?」 「は? どういう状況だよ」 「なんか、あれだよ。お嫁さんが旦那さんのことをお迎えして、ふとワイシャツみるとくちびるの形した口紅がべったり付いてた、みたいな」 「は、意味わかんねえ」 乾いた笑みを浮かべながらも、どこか優しい表情をした稜がそうつっこんだ。 だが、くちびるを触ってみても口紅がついている感じもしないし柔らかい感触しかしない。当たり前だが。

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