306 / 527

[17]-6

しばらくその状態が続き、口で息をしていると稜がやってきた。 「……稜……」 「お粥。そこまで熱くしてないし、そんなに多くないから。無理して食わなくていい。あと、食ったら薬飲め」 「ありがと……」 むくっと起き上がり、木製のスプーンを掴む。だが思うように力が入らず、お粥を掬えずにいると稜が近くに来た。 「そうだった。おまえ、熱出すと力入んなくなるもんな。ほら」 稜が橙里の手からスプーンを取り、橙里の代わりにお粥を掬って橙里の口の前まで運んだ。 これは所謂あーんというやつで。 高熱でぼーっとするもののこれが恥ずかしい行為だということはわかる。 口を開けるとスプーンが入ってきて、スプーンを咥えると稜がゆっくりとスプーンを抜いた。 口中に優しい味が広がり、ほどよく温かいお粥に稜の気遣いが表れているように感じる。

ともだちにシェアしよう!