307 / 527

[17]-7

「……おいしい」 「そうか」 そこからは特に会話することなく、互いに黙ってお粥を口に含んでいった。 スプーンを持つ稜の手は長くて綺麗で、その手で触れて欲しいと思ってしまった。熱が出ている所為か、思考が子ども寄りになってしまっているようだ。 気が付けば全て食べてしまったようで、稜が最後の一杯を手に取ったところで乱雑に橙里の口に入れた。 「……んぐっ」 「終わり。薬飲めよ」 「んー」 スプーンを自分で口から取り、稜に渡した。すると水が入った透明なグラスと三粒ほどある風邪薬を渡された。 「……これ」 「確かよく効くのそれだったよな」 「うん……覚えてたんだ」 「まあ」 橙里は身体が強い方ではなく、薬でも副作用があるものとないものがあった。一度だけ容量を間違えて飲んでしまったときに強い吐き気に襲われたことがありそれ以降薬は嫌いだったのだが、今稜に渡されたものは唯一平気なものだった。 先に薬を口に含んでから水で流し込む。稜にグラスを渡すと部屋を出て行った。

ともだちにシェアしよう!