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「あっ……稜、どうしよう……」
「……ん? ああ」
橙里の言葉で察したらしく、稜が苦笑した。触るまでもなく見ただけでわかるほど反応しているそれは、男だということを強調していた。
足をもぞもぞとさせると、稜が腰をぽんぽんと叩いてきた。
「安心しろ。おまえがそんな状態なのに手は出さねえよ」
「当たり前っ」
スウェットを元の位置に戻され、毛布をかけ直された。
──う。無性に抱きつきたい。
特に付き合っているわけでもないのに、どうして恋人同士のようなことをしたくなるのだろう。
「もう行く?」
「……そうだな。なるべく早めに帰れるように努力するけど、夕方くらいになる」
「え、嘘っ。今まだ九時くらいじゃない?」
「は? もう昼過ぎだっつうの」
「なっ……! げほっ」
大きい声を出そうとすると、咳き込んでしまった。もしかしたらそんなに自分は寝込んでいたのだろうか。
ということは、稜は親切で橙里のことを起こさないようにしてくれたのだろう。
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