「……じゃあ、俺この後用事あるんだわ。今日はありがとな」 「いや。久々に話せてよかった」 「橙里にもよろしく言っといて？ じゃあなー」 日が少しだけ傾いてきた頃、山本と別れた。やはり仲が良かった旧友と話すのは楽しく、時はあっという間に過ぎてしまうのだと改めて思った。 唯一心配事があるとすれば橙里が全く連絡をしてこないこと。なにもないのが一番いいのだが、そんなことは絶対にありえない。 こちらから連絡してみようと思い携帯の電源を付けようとすると、何故か携帯の画面が真っ暗なまま動かない。 ──まさか。 何回かボタンを押してみると、充電を促す画面に切り替わる。 きっと、橙里からなにも連絡がなかったのは稜の携帯が切れていたからだろう。だとしたら、橙里はかなり焦っているのではないだろうか。