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「……稜さん」 「なに」 「僕がこっから離れても、ドア開けない?」 「だから、なんで」 「それは……言えません」 「言ってくれたらいい」 「ほら。誰にでも言えないことの一つや二つはあるでしょ?」 「俺はおまえに言えないことなんかないけど?」 「……」 待って。さらっと殺し文句言うのやめてくれ。 橙里は稜が見ていないのに赤くなった顔を隠すように俯き、ため息を吐いた。気が緩んだ所為か、橙里の口からは普段絶対に言わないような言葉が出た。 「……あかんって……」 「……」 関西弁を使ったことに気付かぬまま、そう呟く。だから、稜の言葉の異変にもすぐに気付けなかった。 「なにがあかんの? あかんことなんてなにもないやろ」 「だって……、えっ」 「で? まだ開けてくれへんの?」 稜が関西弁になっている。 それはあまりにも破壊力がありすぎて、橙里は口も手の力も緩んでしまった。 「……困る」 「ふぅん……」 稜が、一呼吸置いて言った。 「じゃあ、困れよ」

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