350 / 527
[18]-24
「……稜さん」
「なに」
「僕がこっから離れても、ドア開けない?」
「だから、なんで」
「それは……言えません」
「言ってくれたらいい」
「ほら。誰にでも言えないことの一つや二つはあるでしょ?」
「俺はおまえに言えないことなんかないけど?」
「……」
待って。さらっと殺し文句言うのやめてくれ。
橙里は稜が見ていないのに赤くなった顔を隠すように俯き、ため息を吐いた。気が緩んだ所為か、橙里の口からは普段絶対に言わないような言葉が出た。
「……あかんって……」
「……」
関西弁を使ったことに気付かぬまま、そう呟く。だから、稜の言葉の異変にもすぐに気付けなかった。
「なにがあかんの? あかんことなんてなにもないやろ」
「だって……、えっ」
「で? まだ開けてくれへんの?」
稜が関西弁になっている。
それはあまりにも破壊力がありすぎて、橙里は口も手の力も緩んでしまった。
「……困る」
「ふぅん……」
稜が、一呼吸置いて言った。
「じゃあ、困れよ」
ともだちにシェアしよう!