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稜は、なにを思って橙里にあんなことをしたのだろうか。 ただ面白がっていただけなのか、男として普通に処理を手伝ってくれただけなのか。真意はわからないが、どんな理由であれ恥ずかしいのに変わりはない。 「……急げ」 「あっ、うん」 ずっとベッドの中にいた橙里に、稜が再度声をかけてきた。相変わらず事後でも淡白な男だ。 もそもそと起き上がり、伸びをする。今日は昼頃に予約が入っていたから、さほどゆっくり出来ない。 いつものように早めに準備を済ませ、携帯の着信をチェックする。すると、戸園から一つのメッセージが。 『ねえ、抱いてーって言えました?』 そのメッセージの後にはハートを抱えたかわいらしい猫のスタンプも送信されている。 つい苦笑してしまい、橙里は片手でフリックを操作した。 『言えないよ。てか逆に気まずくなった気がする』 こう送ればきっと戸園は気になって催促メッセージを送ってくるだろうが、それは直接言えばいい。

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