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急いで着替え、稜が用意してくれたパンを齧る。するともう一度戸園からメッセージが届いた。 『え、嘘。大丈夫ですか?』 そこまで気まずくはないのだが、かなり心配してくれている。携帯片手にニヤニヤしていたからか、通りがかった稜に不審そうに声をかけられてしまった。 「……なにしてる?」 「あー……なんでもない。もう行けるよ」 このやりとりを見られたら終わる。必死に携帯の画面を隠すと、更に不審そうな目で見られた。 そんな視線から逃げるように部屋を出て行き、玄関に行って靴を履く。稜が洗面所に入り、なにかスプレー缶のような物を手にやって来た。 「……稜?」 「いつも付けてるだろ。忘れてる」 「あーそうだった」 前を見据え、頭を動かさずに静止する。稜がスプレーのミストを頭に満遍なく振りかけてきて、ふんわりと柔らかい香りが鼻を突き抜けた。 香り付け用のスプレーだった。 「稜はいいの?」 「いい。料理扱ってるしな」 「そっか」 立ち上がり、稜が靴を履くのを待つ。やや広めの玄関でも男二人が立つと窮屈で、早く出てしまおうと思っていると服の襟を掴まれる。 急な圧迫に驚いて稜の方を振り向くと、触れるだけの啄むようなキスをされた。 「んっ」 「……」

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