358 / 527
[19]-5
「……明日」
「なに……?」
「おまえに言いたいことがある」
「……んっ!?」
──とうとう、この家から追放されるのか……!?
稜の目を見つめたままびくびくしていると、稜がため息を吐く。
「別におまえを追い出したりするわけではねえから」
「あ、そう? ……じゃあなに?」
「明日。明日じゃねえと意味ないから」
何故か明日ということにこだわる稜。そんなに橙里の誕生日に告げないといけないことなのだろうか。
大して気にする必要もないと思い、歩きだそうとすると後ろから思いきり抱きすくめられる。
男だからこそ出せる強さの力で、腕が橙里の首元と胸元にある。それは不思議と安心してしまうもので、何故抱きしめられたのかはわからない。でも、稜の温もりに触れられるだけでいいと思った。そして、絆されたとも思った。
「……稜……?」
「……」
「な、なんか言ってよ……」
「……もう少し、このまま」
「んむ……!」
顔を無理やり後ろに向けさせられ、頬にキスをされる。まだ人通りの少ない舗装された道で。くちびるには触れてこないむず痒さに襲われ、橙里からくちびるめがけキスをした。
甘ったるい朝だった。
ともだちにシェアしよう!