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「……明日」 「なに……?」 「おまえに言いたいことがある」 「……んっ!?」 ──とうとう、この家から追放されるのか……!? 稜の目を見つめたままびくびくしていると、稜がため息を吐く。 「別におまえを追い出したりするわけではねえから」 「あ、そう? ……じゃあなに?」 「明日。明日じゃねえと意味ないから」 何故か明日ということにこだわる稜。そんなに橙里の誕生日に告げないといけないことなのだろうか。 大して気にする必要もないと思い、歩きだそうとすると後ろから思いきり抱きすくめられる。 男だからこそ出せる強さの力で、腕が橙里の首元と胸元にある。それは不思議と安心してしまうもので、何故抱きしめられたのかはわからない。でも、稜の温もりに触れられるだけでいいと思った。そして、絆されたとも思った。 「……稜……?」 「……」 「な、なんか言ってよ……」 「……もう少し、このまま」 「んむ……!」 顔を無理やり後ろに向けさせられ、頬にキスをされる。まだ人通りの少ない舗装された道で。くちびるには触れてこないむず痒さに襲われ、橙里からくちびるめがけキスをした。 甘ったるい朝だった。

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