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「百川さーん。雑誌ってこれでいいの?」 「ん?」 矢本から渡された雑誌をいくつか確認する。若者向けの雑誌、アラフォーやアラサー向けの雑誌があることを確かめてから矢本に返した。 「これでおっけー。あそこの棚に置いといて」 「わかった」 「……ん?」 矢本が橙里のことをじっと見つめて動かない。不審に思い矢本のことを細目で見ると矢本が顎に手を当ててから言った。 「ちょっと髪長くない?」 「あー……やっぱ? そろそろ切りたいって思ってたんだけど時間がねえんだよな」 伸びた前髪を摘み、宙に浮かせる。 襟足を触るとかなり伸びていて煩わしく思えてきたのだが、急にふと思いついたことがあるので矢本の腕を掴んだ。 「おまえさ、僕の髪切ってみない?」 「……は?」 「雑用ばっかでも暇だろ。失敗してもいいから、髪貸してやるよ」 「本当にいいの? 俺の好きにしちゃうよ?」 「いいよ別に。短くなっても特に気にしないし」

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