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あ。橙里は急に思いついた。
「瀬島さんさ、そろそろ髪色変えた方がいいんじゃない?」
「え? いいよ。プリンだけどまだそこまで酷くないし……」
そう言う様子を見ている戸園に目で鏡越しに合図をする。すぐに察した戸園がにこっと笑ってから瀬島の方に向いた。
「いや、金髪やからプリンも目立っちゃうんですよ。せっかくやし、落ち着いた髪色にしてみたらどうです? 樹くんにとってもいい練習台になりますよ」
物腰柔らかな言い方だから、戸園には不思議と相手を納得させてしまう力がある。現に、瀬島もなにか考えるように「うーん……」と唸った。
矢本は一瞬戸惑った顔を作るも、すぐカットを始める。
「百川さーん。どう?」
「あ、うん。すっきりしたと思う。前髪はあんまりいじるんじゃねえぞ」
「え、なんで?」
「なんでってそりゃ……」
稜は、前髪がある方が好きだから。
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