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『……そうなのか。それは……』
『あ……でね?』
女子たちが目配りをする。なにか言うのを躊躇っていたようだが、そのうちの一人が橙里の方を向いて真面目な顔つきで言ってきた。
『今、百川くんが狙われてるって噂』
『……え?』
稜がぴくりと反応する。まあこういうことが起こるのは一度や二度ではないので慣れているのだろうが、反応するとは思わなかった。
『だから、気を付けてね。持ち物とか似てきてるし……前、ネクタイ盗まれたんもだんね?』
『ああ……そう。新しいの買ったけど』
話していて正直ゾッとする。
好意を向けられること自体は別に構わない。でも、何事にも限度というものがあるわけで。
『……こえー』
『……うん。だよね……』
稜が足でつんつんと脛をつついてくる。その稜の顔を見れば顎でクイッと合図され、その方向を向くと案の定男子生徒が橙里のことを見ていた。
その瞬間、最低なことを思いついた。
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