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稜がおもむろに窓際に橙里のことを引き寄せ、稜が窓の縁に座る。 そのまま稜が足を開き、その僅かに空いた隙間に橙里を引き寄せてから強く抱きしめてきた。 『っ……!』 稜の微かな匂いが鼻に充満する。確かにこっちの方が効果はあるのかもしれないが、恥ずかしさが増す。これなら後ろから抱きつく方がまだいい。 耳を澄ませると足音が聞こえてきて、つい橙里も稜の身体に腕を回す。 扉がガラッと勢いよく開く音がした。 『……えっ、北見くん……!?』 ああ、この声はあの男子だ。心臓がバクバクと高鳴る。 そう。作戦とは、男子が来るタイミングを狙って二人で密着しているところを見せることだった。 『……なに』 稜が橙里の繊細な髪をくしゃっと掴む。その頃から橙里の髪色は明るかったから、橙里だということは一目瞭然だ。 男子が息を呑む音がした。 『君たちって、そういう関係だったの?』 『……どういう?』 『言いふらしちゃってもいいんだ。そうしたら、二人は僕みたいに嫌われる』 男子の性格がまざまざと表れた台詞だ。少し、恐ろしくなる。 『……稜』

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