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戸園が橙里の左手に右手を重ねてきた。それはまるでホストのような行動でつい苦笑してしまう。
「だめなもんはだめ」
「つまんない人やなあ。かわいいですけどね」
「……蒼樹酔ってる?」
「……」
「おいこら」
「こんくらいじゃ酔いませんよ。あー聞きたかったな、ももさんの関西弁」
騙された。
あのまま戸園が酔ってると思い込んでいたら確実に関西弁で喋っていたはずだ。
まあ、欺かれたなら欺き返せばいいだけであって。
「蒼樹は悪う奴やなあ」
「……」
不意打ちで関西弁を使ってやった。すると、戸園がかなり目を見開いて橙里の顔を見つめる。
どやあ。
「三十路舐めんな」
「堪忍や」
戸園が顔を手でぱたぱたと扇いだ。その顔は少しだけ紅く染まっていて関西弁の力は偉大だなと思っていると稜が近くにやって来る。
「あ、稜くんだー」
「やだあ、男前でかっこいいわあ!」
瀬島と幹が反応した。矢本は稜の顔をまじまじと見つめていて、顔の整いように驚いているようだった。
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