378 / 527

[20]-10

「……」 「……なに?」 橙里の他の四人がじっと見つめてくる中、稜は橙里の顔を無表情で見つめる。 なにも話さない稜を橙里も見つめていると、戸園が「あー……」と声を漏らした。 「稜さん。俺、付き合うてる人いるので心配はいりませんよ」 その戸園の言葉に稜が心做しか表情を緩めた気がする。確証はないが。 「……そう」 「ええ。なんとなく気持ちはわからなくもないですけど、縛りすぎても嫌われてまう一方やと思いますよ?」 「……」 「ま、嫌われてまう心配なんていらんと思いますけどね」 戸園の言っている意味がよくわからない。でも、橙里を除く三人はなんのことかわかったらしく、頷いたり納得したような顔をしたりしていた。 稜が息を吐き、戸園のことを見る。橙里のことを見ないもどかしさに何故か不思議な気持ちでいると、稜が頭を下げた。 「……どうぞ、ごゆっくり」 頭を上げた稜はこちらを見ることなく歩き出して行ってしまう。 そのタイミングを見計らい、戸園に話しかけた。 「……なんの話?」 「え、わからへん?」

ともだちにシェアしよう!