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「こんにちはー」 今日は、橙里の誕生日だ。 稜とは普通に会話をしたし、特に変わった様子はなかった。 いよいよ、今日。なにかを言われる。 今日は四人ほど予約が入っていて、忙しいのだがそれくらいが丁度いい。 そうじゃないと時間が経つのが長く感じてしまうから。 「こんにちは。橙里さんって今日誕生日ですよね?」 「うん。そうだよ」 「これ、プレゼントです!」 「え、そんないいのに……」 シンプルでまあまあ大きい紙袋を渡された。こういうものは受け取らない方がいいのだが、折角準備してくれたのでありがたく受け取ることにする。 「ありがとう。ごめんね」 「いいんです! いつも丁寧に切ってくれるし、彼氏からも褒めてもらえるんですよー!」 「そうなんだ。じゃあ、今日もかわいく切らないとね」 受け取った紙袋をカウンターの裏に置き、女性に向き合う。 さて、今日も仕事が始まる。

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