385 / 527

[21]-2

「はい、終わり。お疲れ様でした」 タオルを取り、女性の髪を整える。元がいいので髪を切って巻くと更に華やかさが増した。 椅子を回し、立ちやすいように誘導する。女性が慣れたように立ち上がり、服を整えた。 「ありがとー。そういえば……あの男の人って、新人?」 「ん? ……ああ」 女性が指さしたのは店内の掃除をする矢本だった。 矢本はこっちに気付くことなく黙々と掃除をしている。まあ、男前ではある。 「そうだね」 「かっこいい人ー……ね、次来るときあの人にお願いしてみてもいいかな?」 「……へ」 驚いた。 まさか矢本に切って欲しいとは意外だ。でも、矢本にとっていい経験になるだろうし、橙里は微笑んでから言った。 「もちろん。気に入らなかったら僕に戻ってきてもいいからね?」 「あははっ、うん!」 女性の会計を済ませ、頭を下げる。 頭を上げると、すぐ隣に矢本が立っていた。

ともだちにシェアしよう!