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帰ってくると、羽村が客の対応をしていた。相手は男性だ。
「ありがとう。桐野さんは本当に素敵だね」
「そんなことないです……っ!?」
すると、おもむろにその男性客が羽村の尻をぐっと掴んだ。橙里も何度か経験はあるがやられているところを見るのは初めてだ。
矢本と二人で止めに行こうとすると、その男性客の手を戸園が握った。
「……すんません。ここは風俗ではあらへんので、こういうことされると困るんですよね」
その声に怒りが混じっている。橙里の脳内には、幹の声が流れていた。
『守ってくれるのは恋人』だと──まさにその通りだと思った。
橙里と矢本も加勢に向かう。
「その通りです。お代は結構ですので、この美容室への出入りは禁止にさせていただきますね」
「なっ……私はただ桐野さんが綺麗だと思っただけだ!」
「気持ちわりぃんだよ。おっさんが羽村さんに手ぇ出すんじゃねえよ」
「……樹」
それはさすがに言い過ぎだ。
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