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「ありがとうございました」
今日最後の客を見届け、頭を下げた。すっかり辺りは暗くなっていて夕焼けすら見えない。
後ろを振り向くと幹が立っていた。その手には紙袋があり、すぐに橙里は察する。
「はい、お誕生日おめでとう」
「ありがとう……って、重っ」
小さめのものなのに、かなり重い。金属かなにか入っているのかと思っていると、幹が中身を教えてくれた。
「簡単に言うと、装飾物がたくさん入ってるわ。髪飾りとか、ネックレスとかもね。指輪は何号かわからないから買えなかったけどね」
「ありがとう……高かったでしょ」
「あらやだあ、ももちゃんの魅力が増すならいいのよ!」
その言葉に苦笑していると、瀬島が降りてきた。掃除をしに来たようだ。
瀬島が看板をひっくり返してから橙里に袋を渡してきた。
「ほい、おめでと」
「ありがとう」
「ももちゃんがもっと綺麗になりますように」
その言葉で察したが、恐らく袋の中身は美容品だろう。橙里はそういった類に興味がないのでこれを機会に使ってみようか。
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