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戸園から貰った紙袋に全て詰め、それを手に休憩室を出る。 幹の元へ向かい、瀬島の掃除の手伝いをしようとすると何故か止められた。 「だめよおー! ももちゃんは今日は帰っていいわ!」 「え、でも……」 「誕生日くらい甘えてちょうだい! それに……」 「……っあ!」 幹が指さした方を見てみると、稜が白い息を吐きながら店外で待っていた。 「いってらっしゃい。アタシはずっとももちゃんのことを応援してるわ」 「……うん」 やや顎を引き気味に、上目遣いをするように幹を見据えて頷いた。 言ってしまえば、橙里の誕生日はこれからだ。 「……ありがとう」 今日何回目になるかわからないほど言った台詞をゆっくりと言う。 そして、店内に背を向けて扉を開けた。ベルの音が鳴る。 そのベルの音に対応するように稜が振り向き、微笑んだ。丁度そのとき車が通り、その灯りで稜の顔が照らされる。 ──かっこいい。

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