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「今日は早かったな」 「うん。早く帰っていいって言われたから」 「……そうか」 稜が橙里の持つ紙袋に一瞬だけ目を向け、すぐに歩き出す。だが家とは全く違う方面で、橙里は慌てて稜の腕を掴んだ。 「待って。どこ行くんだ?」 「ああ、ちょっとな。車乗れ」 「え、運転出来んの?」 「出来る。言ってなかったか、車持ってるって」 「聞いてねえ」 稜がそのまま歩きだそうとするので、腕を掴んだままついて行く。車が止まっているのはレストランの駐車場で、黒く艶めいた大型の車のロックを稜が外した。 車に疎い橙里でもわかる。かなりの高級車だ。 「……こんな金持ってたっけ?」 「成人祝いでな」 「成人になっただけで車貰えるって……まあ、稜の父さん社長だし当然か」 助手席のドアを稜が開け、乗るように促される。橙里は慣れないながらも車に乗り込んだ。紙袋を後部座席に置いてからシートベルトを締める。 稜も乗り込み、座った反動で車が揺れた。スムーズな動作でシートベルトを締め、前を見据える。

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