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「稜、寒くない?」 「……まあ」 「……」 「……わかったよ」 無言で見つめると、稜がしていたマフラーを橙里に巻き付けてくれた。稜も寒いくせに、優しい。 そういえば、一ヶ月くらい前にもこういうやりとりがあった。そのときは稜のことが好きだと自覚していなかったが、今となっては稜の言動全てが橙里の胸を高鳴らせる。 ──やっぱり、好きだな。 何度でも思う。 稜以外の人間は好きになれない。稜だから好きになった。 歩き出す稜の袖を掴み、やや小走りで近付く。 「……なあ」 「なに?」 「おまえ、忘れてる?」 「……へ?」 「俺がなんでおまえにキスしたのか、聞きたいんじゃないのか?」 「……あ! そうだ!」 それがかなり気になっていた。あのときは尋と康に邪魔をされてしまったが、今思えばかなり気になる。 言いたいこと、とはそのことなのだろうか。

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