402 / 527

[21]-19

「橙里……」 稜が橙里の頭を撫で、更に強く抱き寄せた。稜の匂いがする。 想いがやっと通じ合った。 『好き』 この二文字だけでこんなにも幸福な気分になれる。それはお互いの関係を大きく変えてしまう言葉。 なのに言うのはかなり困難で、何故か慄いてしまう。 その理由は単純で、その言葉の意味の大きさを知っているから。 でも、言ってしまえばこんなにたくさんの幸せを味わえる。それを今日、身を持って知った。 ──好き……この人のことが…… 稜の腕の力が緩む。それを合図に、橙里と稜はぶつかるように口付けを交わした。 赤い舌が扇情的に絡み合う。 そのキスは、今までにしたものとは比べものにならないくらいに深く深く、長いキスだった。 まるで、二人の未来を約束するように────。

ともだちにシェアしよう!