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「てか、もう着くじゃん」 「当たり前だろ。行きはおまえを起こさないようにゆっくり走ってたんだから」 「お気遣い感謝です……」 そのまま減速することなく地下の駐車場に行った。 地下の駐車場に入ったのは初めてだ。 「……あれ? 朝は歩いて行かなかった?」 「ああ、準備中に車を取りに行ったから」 「……ふぅん……」 「おまえの為にな」 「うっさい」 まるで心の中を読まれたように言われて、ついそう言ってしまった。我ながらかわいげのない反応だ。出来る限り素直になろうと思っていたのに。 髪を弄り、指先でくるくると回す。 「降りて」 「……うん」 握った手を解き、後部座席から紙袋を取り出して降りた。 駐車場に降り立つと、足音が響く。周りにはたくさんの車が止まっており、このマンションに住む住人の数を示唆していた。 「ほら、早くしろ」 「えっあ……う、うん」

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