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まるで当たり前のように手を握られ、ついびくっとなってしまった。 稜の顔を見ると優しい顔で橙里のことを見つめていて、更に顔が紅潮する。 「……かわいい」 「……」 「かわいいよ」 ──反則っ……! 橙里も稜のように甘い言葉が言えればいいのに、そんなことを言える余裕すらない。 女相手ならいくらでも言えるのに、稜の前ではすっかり恋愛初心者だ。 「……稜」 「うん?」 「……好きになってくれて、ありがとう」 でも、これくらいは言える。 今日十何回目かの『ありがとう』を、今日一番想いを込めて言う。 すると、稜が空いている方の手で何故か口を覆った。 「……どうしたの?」 「おまえさ……」 「へ?」 「んなかわいいこと言って、俺がなんとも思わないとでも?」 「はい?」 「ほんとおまえ馬鹿……覚悟しとけ」 「ちょっと!?」

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