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最早それしか言えない。かなり高額だろうし、この世でたった一つしかない代物だろう。
「うれし……」
指輪をそっと触り、なぞる。シルバーから橙色へと変わる境目がなんとも美しかった。
しかし、ワインの存在をすっかり忘れていた。橙里は紙袋を漁る。
ワインを慎重に取り出して包んでいる紙を外していく。すると、なんだか高級そうなワインが姿を現した。
「おー……お?」
「すげえいいワインだぞ、これ」
「どこら辺が?」
「はは、そうか。橙里にはなにがなんだかわからねえよな」
稜が笑った。そこには揶揄がなく、純粋に笑っていた。
──わ、笑った……!?
稜が近付いてくる。きっと今の橙里はかなり顔が紅いだろう。
「ここに数字があるだろ? これがこのワインが出来た年なんだよ」
「あ……僕が生まれた年じゃん」
「そう。おまえと同じ。やっと探して手に入ったんだよな、これ」
稜がワインを掲げ、なにか愛しいものでも見つめるように目を細めた。
なんだか悔しくなり、橙里はむっと頬を膨らませる。
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