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粗方掃除を終え、予約表を確認する為にカウンターに行く。
カウンターの後ろにある扉付きの棚から分厚いファイルを取り出そうとすると、棚の向こうから声がした。
いや、正しくは棚が背を向ける壁の向こうにある給湯室から声がした。
この野太い声は幹だろうか。
「そう、そこにあるだろ?」
「……ん?」
あれ、オネエ言葉ではない。
電話をしているようだが、電話相手は例の彼だろう。もしかして、彼の前では普通に男なのか?
そのまま盗み聞きをする。
「……ん? 昨日一緒にいた子? ああ、百川橙里って言うんだよ。美容師」
急に橙里の名前が出たから驚いた。きっと、彼が嫉妬でもしたのだろう。男の嫉妬は醜いが、恋人ならかわいいと思えてしまうのだろうな。
「三十四歳だよ。まあ、若いコに手を出すことはないから安心しろって」
「……しろ……?」
やばい。橙里の中の幹のイメージがどんどん壊れていく。
幹が四十代半ばということは、彼も四十代ということになるのだろう。
幹が好きになったのだから、きっと人柄がいいんだろうなと思っていると幹が通話を終えて戻ってきた。
「あら、ももちゃん! おはよお!」
「……えっ?」
「どうしたの? やだ、なんかかわいいわ!」
「怖い怖い!」
「ええっ!?」
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