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橙里が不意に小さく呟くと、二人とも瞬時に反応した。当然、『好き』という言葉にだ。 「……ほんまに好きなんですね、稜さんのこと」 「うん……好き」 「幼馴染だったんだっけ? いつから一緒にいるの?」 「……うーん……小学一年生の頃からは絶対に一緒にいた」 「わーお。それはすごいね」 羽村が元々大きい目を更に大きく見開かせてみせた。 もうそんな幼い頃の記憶なんてないが、一つだけ印象深い出来事がある。 小学二年生の頃のこと。二人で一緒に遊んでいたときに話していた内容だ。 『そういえば、ぼくのおかーさんのお姉ちゃんがけっこんするんだって』 『……けっこん?』 砂遊びをしていた。橙里がそう切り出すと、稜が結婚という言葉に大きく反応したのだ。 それをきっかけに、橙里は結婚ということについて幼いながら語りだした。 『けっこんって、好きなひとどうしでするものなんだって』 『知ってるよ』 『ぼくたちもいつかけっこんすることになるのかなあ?』

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