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将来を思い描きながら砂を固めて作った山をぽんぽんと叩いていると、稜の手が不意に止まる。
済んだくりっとした大きな目を稜に向けると、稜が橙里のことを見つめてきた。
『おれは、けっこんするなら橙里としたいよ』
『……え、ぼく? ぼくおんなのこじゃないよ?』
『わかってるよ。でも……』
稜が言葉を切った。やや俯きがちになり、砂を手で弄る。その顔には子どものあどけなさというものがまるでなく、当時の橙里から見たらかなり大人びていた。
『女より、橙里のほうが好きだし。橙里とならずっと一緒にいれると思うんだ』
『……ぼくも稜のこと好きだよ!』
『……橙里』
まるで子どもがする会話ではない。
でも、無垢で無知な橙里と稜は“結婚”という言葉の意味の大きさを知らなかった故の会話だろう。
『じゃあ、将来おれとつきあってくれる?』
『つきあうのとけっこんだと違うの?』
『うん。おとこどうしでもつきあえるんだよ』
『ならつきあう! 稜とおとなになったときにつきあう!』
『やくそく』
『うんっ』
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