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そんな、些細な子どものときの約束。結果として本当にその通りになってしまった。
稜が叶えさせてくれたのか、橙里が自分で叶えたのか。
「……懐かし」
「へー……子どものときに約束したことが、本当になったんだ」
「漫画みたいですね。でも、本当にあるんやな……」
羽村と戸園が優しげな表情でそう言った。
あまり長居し過ぎても失礼なのでお暇しようと立ち上がる。
すると、羽村に「あっ、待って!」と呼び止められた。
「ん?」
「……初めてするときは、誘うといいんだよ」
「ぶふっ」
「そうすると……多分、優しくして貰えると思うから……」
「聞こえとるよ?」
「あっ!?」
気付けば羽村のすぐ後ろに戸園がやって来ていて、襟をがしっと掴まれていた。そのままずるずると引き摺られていき、傍観していると見たくない光景を目撃してしまうので慌ててドアを閉めた。
──ごめん、羽村さん。
やや小走りで休憩室から遠ざかり、資料室に向かった。そこには誰もいない。
資料室の奥にある扉を更に開けると本当に小さな小部屋がある。そこには一つ窓があり、そこから覗くと稜が働いているレストランの裏口が見えた。
橙里は、無意識の内に電話を取り出す。
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