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そのまま携帯を操作し、稜に通話をする為通話ボタンを押した。今の時間帯は仕込みのはずだから、きっと出てくれる。
そんな橙里の読みは当たり、すぐに稜が出てくれた。
『……もしもし。どうした?』
「あ……今平気?」
『大丈夫。なにかあった?』
優しい稜の声が直接耳に響く。それに多幸感を感じながら恐る恐る口を開いた。
「裏口から外に出てくれる?」
『……裏口?』
そう言うと同時に窓を開け、稜からも見えるようにした。
すると裏口からソムリエ姿の稜が出てくるのが見えて、会っていないのはたった数十分なのにとても愛しく感じた。
「稜」
やや大きめの声でそう呼ぶと、稜が橙里がいる方向に振り返ってくる。その全てがスローモーションに見えた。
稜の顔が橙里を見た瞬間に優しく和らぎ、手を振ってきた。当然橙里も振り返す。
『初めてだな、そこから顔見せんの。寂しくなった?』
「そんなんじゃないよ、ただ……」
『ただ?』
「稜の顔が見たかった」
それを言うのが恥ずかしくて、小さい声で言ってしまった。でも稜には電話越しで聞こえていて、稜がふっと微笑む。
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