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『俺も橙里の顔見たかった』
「りょ……」
橙里、と呼ばれて心の底から嬉しくなる。その声で橙里という名前を呼ばれるだけでこんなにも幸せになれる。
──大好きなんだなあ。
つい口が弛む。
『……なあ、覚えてる?』
「な、に?」
『今日、俺の誕生日なんだけど』
「おっ、お……覚えてるよっ!」
覚えていないはずがない。毎年、この日になるたびに稜のことを思い出していたのだから。
必死になってそう言うと、稜がくすっと笑った。
『んな焦んなくてもいいよ』
「あ……いや、でも……その」
『やっとおまえのこと抱けるからな。覚悟しとけよ』
「うー……」
発言の隙を与えてくれない。
稜がそれを見越したようにまた微笑み、橙里のことを見上げてくる。
『で、なに言いたい?』
「……へ」
『おまえのことだ。顔が見たいなんていうかわいい理由だけで電話をかけたんじゃねえんだろ?』
かわいい、は余計だが。
橙里は大きく息を吸って、ゆっくりと吐いた。
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