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「もっと聞かせて」 「んぁっ……! ふ、ぁ……すき……!」 「もっと」 「はう……すっ、好きっ」 「まだ……足りない」 「……も、はずかし……!」 「三十四年分」 稜が息をやや荒らげながら、律動させながら言葉を切る。 「百回聞いても……足りないから」 「ふ、ぁあっ……んっ、あうっ、んぅっ!」 「死ぬほど……俺が聞き飽きて、おまえも言い飽きるくらい」 「は、あ……ふ、あんっ、はぁっ!」 「好きって……聞かせて……橙里」 大好きな声で、自分の名前が紡がれる。 生理的な涙じゃなく、嬉しくて涙が出てしまった。 何回だって言える。それでも稜に伝わらないなら一生言う。 稜のことが……大好きだから。 「……橙里」 「な、に……?」 「こういう時じゃないと言えねえから……一回しか言わねえけど」 そう稜が前置きする。そして、紡ぐ。 「愛してる」

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