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「いらっしゃいませ、こんにちはー」
やって来たのはいつも橙里のことを指名してくれる女性で、一ヶ月ぶりに来店して来た。
どうやら髪を染めたいらしい。
「こんにちはー」
「今日は髪を染めたいんだよね? ここに座って。どんな色にする?」
「うーん……少しだけ明るい色にしたいんだよね。なんか、印象ががらって変わるやつ」
「んー、だったらアッシュ系の色にする? ラベンダーアッシュとかいいんじゃない?」
カラーの見本を見ながら決めていく。
話し合って、アッシュ系の色にすることに決まったところで誘導する。
「樹」
「ん?」
「シャンプーよろしく。ドライヤーはやらなくていいから」
「……あ、わかった」
矢本を呼び止めてそう言った。これも勉強だ。
カウンターの奥に行き、染める為の準備をする。髪を染めるのは久しぶりだから、慎重にやらなければ。
カット台の近くに一式を運び、スムーズに出来るように配置変えをする。
「あ、髪染めるんだ?」
羽村がやってきた。いつも予約の客が来る前は休憩室でのんびりしているのに、こうやって歩き回るのは珍しい。
「そう。結構久しぶりだから感覚鈍ってるかもなーって」
「なんかそれわかる。失敗したらどうしようって感じだよな」
「うん。ある程度色素が定着して乾かしてみないとわかんないもんねー……って、シャンプー矢本くんがやってるんだ」
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