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でも、今なら思える。 生きていてよかったと。 「……百川さん、終わったよ」 「ああ」 矢本が女性の濡れた髪をタオルで巻いてからそう声をかけてきた。 女性が橙里たちの元にやってきて、羽村の顔を見る。 「羽村さん……なんか変わった?」 「え、髪色かな?」 「ううん、なんか雰囲気が……幸せそうだなーって」 女性の言葉に、羽村が一瞬驚いたように目を瞠った。そういえば羽村はあまり女性と接していないからわからないのだろう。 「羽村さん」 「……うん?」 「女の子は……めっちゃ鋭いよ」 「あはは……ほんとだね。今、すっごく幸せだよ。大事な人に守られて、僕のことを本当に思ってくれてる後輩もいて」 「……っ!」 女性に向かって言ったのか、橙里に向かって言ったのかはわからない。 ただ、羽村のことを思っている後輩というのは橙里のことだろう。 「……羽村さん」 「なぁに?」 「僕、泣いていい?」 「だめだよ! 我慢して!」 こればっかりは本当にうるっときた。まさか羽村の中で橙里の存在がそんなに大きいものだとは思っていなかったからだ。

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