462 / 527
[24]-11
「オレ……ももちゃんにはずっと笑顔でいて欲しい」
「……瀬島さん」
「だから、ちゃんと幸せになってね。オレも……なるから」
照れくさいのだろうか。後半は小さい声であまり聞こえなかった。
ここの人たちは、人思い過ぎる。
橙里は瀬島に抱きついた。
「っちょ……」
「ありがと、瀬島さん。お互いにね」
背中をぽんぽんと叩き、すぐに離れる。にこっと笑って瀬島の顔を見ると、優しい顔をしていた。
──ちゃんと、幸せだよ。
そろそろ下に行こうとすると、幹の野太い声が聞こえた。
「ももちゃあーん、お迎えよー!」
「はーい!」
大声でそう返事をして、瀬島に手を振る。手を振ってくる瀬島は笑顔だった。
バッグを手に取り、階段を急いで降りる。
下に行くと淡い藍色のコートに身を包んだ稜がいて、橙里のことを見るなり微笑む。
カウンターの奥にかけてある薄い茶色の上着を手に取り、颯爽と腕を通した。千鳥柄の服にボルドーのパンツを履いた橙里は綺麗という言葉が抜群に合っている。
稜が愛した橙里の姿だ。
ともだちにシェアしよう!