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「オレ……ももちゃんにはずっと笑顔でいて欲しい」 「……瀬島さん」 「だから、ちゃんと幸せになってね。オレも……なるから」 照れくさいのだろうか。後半は小さい声であまり聞こえなかった。 ここの人たちは、人思い過ぎる。 橙里は瀬島に抱きついた。 「っちょ……」 「ありがと、瀬島さん。お互いにね」 背中をぽんぽんと叩き、すぐに離れる。にこっと笑って瀬島の顔を見ると、優しい顔をしていた。 ──ちゃんと、幸せだよ。 そろそろ下に行こうとすると、幹の野太い声が聞こえた。 「ももちゃあーん、お迎えよー!」 「はーい!」 大声でそう返事をして、瀬島に手を振る。手を振ってくる瀬島は笑顔だった。 バッグを手に取り、階段を急いで降りる。 下に行くと淡い藍色のコートに身を包んだ稜がいて、橙里のことを見るなり微笑む。 カウンターの奥にかけてある薄い茶色の上着を手に取り、颯爽と腕を通した。千鳥柄の服にボルドーのパンツを履いた橙里は綺麗という言葉が抜群に合っている。 稜が愛した橙里の姿だ。

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